Nさんとの出会いは2010年頃のこと、世田谷でのイベントがきっかけでした。
素敵なお住まいで、川田作品のコレクションを楽しんでいらっしゃるとのこと。
Nさんから届いた画像や文章を元に展示風景をご紹介致します。

ギャラリー空間としての玄関

Nさん:「我が家の玄関は北向きなのですが、吹き抜けになっており比較的明るい空間です。
川田さんの作品のおかげでさらに明るく気持ちの良い空間になりました。
普段玄関は出かけるとき、帰宅時以外はあまり用事がないものですが、
何度も玄関室に行っては作品を眺め楽しんでおります。」

吹き抜けからの眺め
Nさん:「階段室には2階へ上がる階段があり、上がり下りの際にも作品が観えます。」


「粒雪・すみか」「粒雪・まどか」
2019
oil on prepared paper
各16x16cm

窓と絵画との間合い

  

Nさん宅の素敵な玄関は、スリットの細い窓が、作品と息を合わせるかの様に、
とても良い間合いを作っていて、明るく、開放的で、
光に溶け込む外の景色に、温かみを感じます。
まるであらかじめ全てが運命付けられて設計されているかのようです。
作品『粒雪』の2点の画像、幸せに包まれて、より生き生きとしている様子に、
本当に心から感謝の気持ちでいっぱいになりました。

家族と作品と空間の対話
Nさん:
「我が家の設置スペースで色々と位置を検討している過程で、
この作品『雪森』は横向きに飾った方がスペース的に優しく落ち着いた空間になり、
しっくり来るという家族みんなの意見が一致して写真のように飾ってみました。

このスペースはLDKのほぼ中央に位置し、部屋のどこからでも自然と作品が目に入る場所で、
すぐ横にダイニングテーブルがありまして、高齢の母が一日のうちほとんどの長い時間を、
ここで編み物をして過ごしているところです。

また作品を正面にして立った後方に、キッチンから続くカウンターがありまして、
その後ろ側がキッチンのシンクと作業スペースになっております。
わたくしは在宅時はほとんどキッチンに立っていることが多いので、
作業の合間にふと顔を上げると、作品が真っ直ぐ目に入る位置です。」

Nさん:
「雪森の表情が陽射しの明るさで変わるのが本当に美しいです。
夜の照明の下の幻想的なのも良いのですが、ちょうど飾った場所が吹き抜けになっていて、
一日のうちでこの時間の室内が一番明るくなり、
作品がそれはそれは美しくなんとも言葉にはできない存在感を放っています。
いまこの時間に誰かに見てほしい衝動にかられます。」


『雪森』
2018
oil on prepared paper
紙:41x31cm
画:39.5×29.7cm
*川田作品の多くは、制作の段階で、作品を回しながら筆を進めています。
所蔵される方々も、天地左右を自由に工夫して楽しんで下さっています。

Nさん:
「玄関室の空間も小さいギャラリーのように生まれ変わり、
私たちを見送り出迎えてくれる素敵なスペースになりました。
母が外出時に使う出入口横の壁の手摺の上方に『風はみちびく』を飾りました。
昨日母が散歩に出掛けて帰宅した際に
『川田さんのこの絵がおかえりなさいと言って出迎えてくれるようだわ』
と申しておりました。

絵画を部屋に飾ることは、ただ単に壁面を華やかに飾り立てるものではなく、
空間全体を豊かな広がりのあるものに変えてくれるものなのだと改めて感じています。

そして作品には川田さんが作品それぞれに込めた様々な息吹が、
空間一帯の波動を豊かに彩る力が宿っていることを確かに感じます。」


*上は「風はみちびく」。2013年に骨折の快気祝いの記念に制作した作品です。


* 寄付のお礼作品。2012年の楽しみ方。
(当時送って下さった画像より)

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Nさんの心のこもった文章がとても嬉しく、
ご本人にご了解の元、画像と合わせてご紹介させて頂きました。

私がここ10年目指してきたことは、
「生活の中で人とともに息づく絵画」ということでした。
美術館所蔵となる作品を制作することが、画家の目標のように思われがちですが、
私の場合、美術館所蔵作品は、
「生活の中の絵画」をより贅沢にするための手段に過ぎないと考えています。
そして、たくさんの人が知っている有名な画家を目指すのではなく、
心ある人々に大切にされ続ける作品、画家を目指しております。
Nさんのご協力を励みに、今後も引き続き尽力して参ります。

協力:ラ・カーサ建築設計事務所