画家の経済学ー画材を購入する自己投資の意味について考えてみる

昨年はピケティの『21世紀の資本』が空前のベストセラーとなりました。
一応ざっと目を通しただけで内容を理解出来ているわけではないのですが、まだまだ勉強をしなければならないことが沢山あることを実感出来ました。今は『シュタイナー経済学講座』も読書中です。

作品を買って下さる方の中に投資家として生計を立てている方がいるので、知らず知らずそちらの方面にも興味を持っています。私はお金儲けとしてではなく、「自分に投資をするとはどういうことか?」を考えるために参考にしています。

私にとっての自己投資とは、例えば画材の購入です。ギリギリの経済状況の中でも、どうしたら納得のいく画材を買う事が出来るか、とても判断が難しいのです。良質な画材はとても高価なものです。身近な安上がりな材料に価値を与える事も、確かにやりがいのある仕事なのかも知れませんが、私はできる限り良質な画材を使いたいと考えるようになって来ました。

新しい画材との出会いによって、新しい世界が開かれるのと同時に、画材を変えても変わる事のない、自分のコアというものを確認するためです。

新しい画材を買い込むためには、ざっと1ヶ月分のアトリエ家賃分が必要という計算を立てます。
1ヶ月生きながらえるのと、新しい画材に挑戦する事で得られる可能性とを両天秤に乗せて、かなり長く迷います。Amazonや楽天、はたまたイギリスやドイツをはじめとする世界中の画材のオンラインショップやヤフオクやメルカリなどの中古品もチェックします。
送料無料、ポイント還元、配送のスピード、支払い方法の充実度、抱き合わせで買う画材が充実しているかどうかの品揃え等々。さまざまな条件を考えるとどれも凄くお得、という情報はめったにありません。結局直接見なければ判断出来ないとなると、往復を高速バスで新宿に直接行って買った方がはずれがないという判断も出て来ます。

しかし結局のところ、新しい画材は使ってみなければわからないので、いろいろ買い揃えておいて、結局長年使わなかっものがたまった時に、ヤフオクやAmazonなどで売ることにしたものもあります。一時は『画材百花』という画材オンラインサイトを自前で作って販売していた事もあります。中古画材といえども、ヤフーショップを使っていたので、全国から注文がありましたが、そもそも元手がかかっていますので、利益になるわけではなく、配送などに手間がかかって継続は1年くらいでやめてしまいました。画材についての問い合わせも頂く事があったので、いろいろなノウハウとを伝えたり、舶来の画材情報などもブログにしていましたが、今はもうそのサイトはありません。

画材をまとめてアトリエ家賃分買う時は、本当に汗が滲み、ドキドキします。本当に使いこなせるのだろうか?何度も自分に問い、一大決意をして買うのです。紙にしても、絵具にしても本当に高い。アルシュというフランス製の紙を一枚無駄にすると、「あぁ」と1枚分に相当する食べ物を食べた時の感じを想像してみたりします。1本約3000円以上するカドミウムイエローの絵具を買い足す時なども、スーパーに行って、買いたいものを全部紙に書いて、それとどちらにするかを考えて、お腹の中に消えて行くものと作品として残るものとを比べて、やはり絵具にしようということになります。

判断の基準は、ここが投資家とちょっと違う所で、いまここにその分のお金があって、買いたい画材があったなら、1ヶ月先の家賃よりも今の画材を買うと決めることです。なぜなら、その画材によって、ダイナミックチェンジが可能になる場合があるからです。ダイナミックチェンジとは、自分の見る世界そのものが変わる事です。同じ地球で、同じ場所に居たとしても、見えている世界が変わります。より自分のコアに近くなれば、それに見合った環境が見えて来るという感じです。

画材をケチケチして、安価なもので満足している状態には、そういうことに興味を持つ人が作品に集まって来ると言うとわかりやすいかもしれません。逆に言えば、アングラで、つましい画家を生きたいのであれば、それがもっとも一番の近道というわけです。

おそらく私自身がまだ知り得ない、想像を絶するような高額な画材や、そういう高額な画材を買える画家、そして想像を絶するようなコレクターが地球のどこかに存在します。それに見合うような意識がなければ、出会いもなければ、想像する事もできない。ただよくわかることは、かつての自分が通り過ぎた安価な画材を使っている人や、そういうことに興味を持っている人たちの事は、「あぁ、かつて私もそうだった」と気付く事ができるだけです。

それで、どうしたらそういうかつての意識ではなく、向かうべき意識に目を向けるにはどうしたらよいか?といえば、とにかく今の自分がとても不可能だと思うことや、絶対無理ということに立ち向かう事です。立ち向かうとは、見ないようにするのではなく、とにかく現実の自分の生活に一つでもいいから少しずつ取り込んで行くことです。そして、知ろうと努力する事です。自分にぴたっと来る画材が、私の作品となることを、地球のどこかで夢みているに違いないと考えてみることです。

そうは言っても、「絶対無理なんだからできない」そう人は言うに違いありません。

先日YOU TUBEでたまたまクリックしたら、33歳にしてドバイの高層マンションに住んでいるというネットでは有名な投資家が、投資の極意をちらっと話ししている動画があって、凄く腑に落ちたので、ここで私が理解した部分だけかいつまんで記録しておきたいと思います。

1.もし株を買うなら、短期利益ではなく長期(だいたい30年後)の利益を考えて買う。

2.人が勧める今買いの銘柄は、実はほとんど利益にならない。

3.利益になる株は、まだ人が知り得ていない無名の時期の株で、その長期にどれだけ可能性を見る事が出来るかを、様々な情報を獲得するために多角的に死ぬ程猛勉強をする。

4.利益を生むタイミングも大事。株が暴落するということがたまに起こるが、その暴落の中でも、巻き返して復活を遂げられる株が存在する。それを見極める事ができれば、少額で株を購入して、後に数倍に株が育って、大きな利益が見込める。

5.株は数百万単位で買っても、失敗をするだけで終わってしまう。株から不労収入を得るような生活を望むのであれば、数千万単位で買える蓄財が必要。先の株の暴落などの大きなチャンス時に、そのお金を持っていて使えるかどうか?そこで明暗が分かれる。

これを画家にとっての投資に置き換えてみるとこうなります。

1.すぐに評価されることを追い求めない。だいたい30年後に多くの人が当たり前となるようなことを真っ先に30年前に制作していなければならない。

2.人が評価している作家のことなどに煩わされない。今の時流に流された制作は、高々ここ数年以内しか通用しない。人の気持ちはすぐに変わってしまうものだから。

3.意義のある制作とは、当然発表当時は、ほとんどの人にピンと来ないし、理解されない。それでも制作に制作を重ねて叡智を養い。さまざまなことを勉強し尽くして、世の中の動向や、人の意識の変化を洞察することで、人の意見に左右されずに自分なりの信念を持って発表し続けることができる。

4.美術界の不況、不振は、ある意味大きなチャンス。そういう苦しい時期に、制作を続け、作品を沢山残し、発表を続ける事ことにこそ必ず付加価値が生じる。

5.並の画材購入で、そこそこに制作発表するだけであっては、大きなチャンスにはなり得ない。使える時にこそしっかり画材を購入し、使い尽くすことで、必ず見えて来る作品、環境、人との繋がりが必ず変わって来る。

本当に画材を購入する時に、つくづく自分が試されます。そして本当の自分の気持ちがどの辺にあるのか、なぜそれを買って使ってみたいと思うのか、じっくり正直に自分と向き合う必要があります。人間だから、さまざまな欲が去来します。その欲が、画家としての歩みに足かせとなっていないかどうか、よく考えることができるはずです。

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