川田祐子は、2019年6月から40日、同年10月から40日間、イタリアのフィレンツェに滞在し、Il Bisonte è una Fondazione specializzata nello studio della Grafica d’arte(イルビゾンテ芸術財団グラフィックアート研究所)にて、銅版画の技術を習得しました。

イルビゾンテ版画工房は、フィレンツェの歴史的建造物に囲まれた地区の南を流れるアルノ川を、アッレ・グラツィエ橋から渡った地域にあります。オフィスには、ギャラリーと版画資料室を備え持つ版画工房です。

イルビゾンテ芸術財団の母体は、日本にもいくつか販売店のある皮革製バッグで有名な会社イルビゾンテです。フィレンツェは、版画技術発祥の地の一つであり、歴史的に重要な製版技術を後世に残す社会事業として、イルビゾンテ芸術財団は国際的に開かれた版画技術を学ぶ教育機関を運営しているのです。

イタリアでは、2008年からシェンゲン条約によって日本人が滞在する場合、3ヶ月以上の滞在にはビザの申請が必要になるため、長期の滞在が難しく、川田は2回にわけて渡航して技術習得に励みました。

エッチング、アクアチント、そしてメゾチントの技法でいくつか作品を工房内で制作しました。工房には、イタリア国内だけでなくさまざまな近隣諸国から若者が集まって学んでいました。その時の作品は、モノクロの作品ばかりとなりました。工房内では、他の人たちと機材を共有するので、カラーインクを使うことが少し難しいからです。しかし、今から思えば、モノクロの作品シリーズとしての版画を持てるようになって、とても良かったと思っています。

私は、イタリア語学校にも通いながら工房に通いましたが、工房では英語とジェスチャーで十分わかり合えました。技術指導の先生、オフィスのスタッフさん、若い学生さんたち、皆とても笑顔が素敵で、親切に接してくださいました。本当に楽しかった!

近くには、国立図書館もあり、また工房に通っている人に割引をしてくれる老舗の画材店もいくつかあり、シャルボネールのインクやファブリアーノ、ハーネミューレなどの版画用紙を安く購入することが出来ました。