ー川田祐子のアクリル絵画についてー

スクラッチ技法

アクリル絵画のスクラッチの手法は、川田が独自に作り上げて行ったものです。最初に絵具層を作ってから、スクラッチで画面の大まかな陰影を作ります。この方法は、古典技法のグリザイユ技法をヒントにしています。陰影によって、画面が立体的に飛び出てくる効果が起きます。さらにスクラッチの線描とハッチングの線描を交差させます。このスクラッチの凹みにハッチングの線が乗ると、複雑な構造になります。平面でありながら、微視的には立体なのです。そのために、画面を斜めから見た時に、画面が目の動きについて来る効果があります。

制作の手順

1.下地塗りなしの極細目のカンヴァスに刷毛を使って、アクリルジェッソを何度も薄く重ね塗りする。そして、塗っては30分乾かす、という作業を15回くらい繰り返す。(最初の頃は均質に塗ることができなかったので、よく乾かしてから、耐水性のサンドペーパーで研磨していました。その後、長年の作業で均質に塗れるようになり、磨き作業は省きました。)


2.次にジェッソ地がよく乾き切ったら、その上からアクリルガッシュを塗り重ねて行く。大体6〜7色、各色につき4回、薄く薄く塗り重ねて、合計28回以上塗り上げる。


3.以上の地塗りがよく乾いてから、スクラッチを施す。大方の構成が決まったところから、ハッチングの線描を入れて行く。

きっかけ

細い線を筆で描くことは最初はとても難しかったことがきっかけで、キャンバス画面にスクラッチ技法を施すようになりました。また当時ちょうど、版画工房で、版画の制作をしたことから、銅版画のエッチング技法からヒントを得ました。絵具層を作ってから、カッターで掻き落とす(=スクラッチ技法)が生まれました。

ハッチング技法

そのままでは、色味がなくなっていくので、2004年ごろから再び筆の線描(=ハッチング)も入れるようになりました。(『ビジュツカンノススメ』展覧会図録、2021年、横須賀美術館、p.67掲載文章より)

アクリル絵画のスクラッチの手法で描いた作品。この手法は、川田が独自に作り上げたものです。まず絵具層を作ってから、スクラッチによって、モノトーンの下地を作ります。そして古典技法のグリザイユ技法をヒントに、画面の大まかな陰影を作ります。
雪波
2008-2013
scratch/hatching
acrylic gouache on canvas
162X194cm
Private Collection

1997年から川田祐子が制作しているアクリル絵画作品の記録をまとめているポートフォリオサイトは、下記の画像リンクをクリックしてご覧ください。