ー川田祐子の油彩画についてー
2024年現在では、油彩画を中心に制作しています、使用する絵具、画溶液、筆を工夫しながら、スクラッチやハッチングの線描も取り入れるようになって来ました。
ボカシ技法
2016年横須賀美術館開催の『川田祐子展 千年の翠』では、線描の全くないボカシ技法で描いた作品を中心に発表しました。油彩のぼかし技法のシリーズは、アクリル絵画シリーズとは対極的であることが重要でした。
このシリーズには、二つの効果がありました。一つ目は、線描のある作品とない作品との比較により、それまでの線描作品の特徴が浮上したこと。二つ目は、線描がない分、大掴みにPRする作品とは何か?を考える姿勢が生まれたことです。
絵具
油彩絵具は、ドイツ製のシュミンケ・ムッシーニを使用しています。この絵の具の特徴は、天然樹脂の落ち着いた光沢と顔料の発色の良さにあります。その明るい透明感のある画肌から、氷、雪、空、水などのモチーフが生まれました。また、透明な仮想の植物なども描くようになって来ました。
油彩画を制作するようになったきっかけの一つは、国産のキャンバス製造会社の倒産です。それまで愛用していた兎膠塗りの極細画布が、手に入らなくなったのです。しかしそれは、油彩画制作へ転換する良い機会となりました。
支持体と地塗り
それまでのアクリル絵画の制作には、カッターナイフでスクラッチ技法を施す手法を使っていました。この手法には、平滑な下地塗り準備が重要でした。きめの細かいキャンバスの布目を潰すために、薄く6層程繰り返しジェッソを塗りました。さらにアクリル絵の具を30層程平滑に塗るという作業がありました。その作業には、緻密な製造を行っていたフナオカのキャンバス布が大変重要でした。
画肌
アクリルガッシュ絵具は、そのままの状態では、合成樹脂特有の光沢が表に出て来ます。そのため、わかる人には、アクリル絵具で描いたものと分かります。一方、スクラッチ技法を使うと、画肌に微細な溝が刻まれ、織物のような風合いが出て来ます。
2016年までは、アクリル絵具の格上げに努力していた制作でした。以降は、油彩画の舞台でどのような制作が可能かを見せる制作へとシフトしています。
2016年から川田祐子が制作している油彩画作品の記録は、下記の画像リンクをクリックしてご覧ください。